ラッキーさんから『ひどい環境で犬を飼っている人がいる』との連絡を受け、さっそくその場に行ってみると、そこには絶句する光景が広がっていました。
車1台通れるかどうかのギリギリの細道。ゴミが散らばる雑木林と休田、ぽつぽつと見える畑、そんな中に5、60坪くらいの空き地があり、板を2枚組み合わせただけの小屋が2つ。
横たわる犬が1匹。喜ぶ犬が1匹。夫婦が1組。老夫婦の車の中には子犬が1匹。
喜ぶ犬は、ラッキーさんが保護し里親募集をしていた犬で、前日にその夫婦に「うちの犬だ!盗まれた犬だ!」と怒鳴りこまれ、一晩預けて様子を見てもらったのでした。
驚いたのは横たわる犬。このコは2月の初めに保護したサンタ(仮名)で、飼い主の元に返した「つもり」でした。ひめさまがキレイにシャンプーし真っ白になって帰ったはずなのに、わずか1ヵ月半でかなり汚れていました。ポンポンとたたいてもピクリともせず、ラッキーさんと顔を見合わせました。お腹はかすかに動いています。今度は揺さぶってみました。すると驚いたようにハッと立ち上がりました。深く眠っていただけのようでした。
その夫婦になぜサンタがここにいるのか尋ねたところ、サンタ(オス)が見つかる前にそっくりなメスを拾い、メスに近づけたくないからオスは離れたところに置いているのだというのです。離れたところって・・・・ご自宅から1キロ以上離れているじゃないですか!!!!
野山の中に鎖でつなげて、雨漏りするだろうと思われる板を2枚重ねただけの犬小屋を置き、床は土の上に薄い毛布を敷いただけ。
この状態を「飼っている」というのでしょうか。ゴハン用の空き缶とお水は置かれていましたが、いつのお水か?と思うほどゴミが浮いていました。
私がサンタだとばかり思い、時々声を掛けていたわんちゃんは違うコで、サンタは人気のないところでひとり寂しく生きていたのかと思うと、自責の念に駆られました。
その夫婦に動物指導センターで処分を待つ犬たちのカラー写真を見せながら、ラッキーさんが丁寧に 『ひと気のないところに犬を置いて、もし誰かが放しちゃったらすぐ気づかないでしょ、何日もさ迷って、もしセンターに送られたら、こんなふうになるんですよ、かわいそうだと思わないんですか?ちゃんとおうちの庭で世話してあげてください!』
するとその夫婦は わかってる、わかってる といい加減な反応。
私が子犬を指して、「あのコは大型犬の子供ですよね?すごく大きくなるだろうし、ゴハンもたくさん食べますよ、4匹も面倒見られるんですか?」と言うと、ビックリする答えが。
『オレは大きい犬が好きなんだ。前の犬もその前の犬も秋田犬みたいな大きな犬だったんだ。でも前の犬はしっかりしつけてやったのに、かあちゃんを噛んだんだ。それは保健所に連れてった。』
え?!大怪我したんですか?
『上着着てたから怪我しなかったけど、すごく痛かったの』
それだけで処分してしまったんですか?保健所では殺処分されることご存知ですよね?
『そうだよ、だって大きくて恐ろしかったもの!』
・・・さっき、大きな犬が好きだって言ったじゃないですか・・・
もう話になりません。
ラッキーさんが『このコは盗まれたコじゃないでしょ?連れて帰るよ。いいですか?』と問うと、『うん、違う犬だった、悪かったね』。
私がサンタを指し、「このコも世話するのは難しいのでは?子犬がいますしね。」と言うと、ふたりは口を揃えて『できれば連れてってくれ』『そうだねー、悪いけど』と、やっかいそうにサンタを見ながら言ったのでした。
気持ちはもう、その黒い子犬に向いていました。車の中がそのコのハウスだそうです。
「ちゃんと去勢してね、約束ね、約束してくれたらこのコたち、引き取るから」と言っても、『去勢はしないッ、避妊もしないッ!うちの娘がぜったいやらないって言ってるから。メスを避妊したらオスと仲良くできない。子犬が産まれたらあげる人いるから』
娘というのはまだ未成年です。もう何を言えばいいのか、ことばが出ません。
2匹を連れ、ラッキーさんと帰ってきました。1匹ずつ世話することにしました。
またこの場所を訪れようと思います。
もしこの子犬がつながれていたら動物指導センターに通報します。
民家のない場所に犬をつないでおくことは責任ある飼育状況とは言えず、また登録や狂犬病予防接種についても確認する必要があります。
里親募集ページに掲載の、はくちゃん、そしてサンタを幸せにしてくださる方を募集します。
うちにきてまだ24時間しか経っていないサンタ、カウチをかじり(汗)、穏やかにお昼寝中です。